あさぶろ日記

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カーテンレールと塞翁が馬の話。

先日、家で仕事をしていたら、寝室の方から「ジャラジャラジャラーン」という音が聞こえた。

何事かと思い駆けつけると、寝室の窓付近に居た5歳の娘がキョトンとした表情。そしてその近くに、豪快に外れたカーテンレール。

ああ、やったな…。
いつかそうなるかと思ったが、遂に来たか。

話は数年前に遡る。


実は今住んでいる家は、新築で購入したのだけれど、購入当時、一部の部屋の窓にはカーテンレールが取り付けられていなかった。自分で好きなカーテンレールを選べるようになっていたのだろうと思う。私は特にカーテンレールについてこだわりは無かったが、デザインよりも、せっかく何も無い状態なのであれば、いっそ自分で取り付けた方が安上がりだ、と考えた。

そういうわけで、別にDIY好きというわけでも無かったが、日曜大工が得意だった父親の姿を思い出し、その血が流れているのであればきっと私にもできるはずだという根拠の無い自信で、カーテンレールを自分で取り付けることにしたのだ。

ほとんどの部屋の取り付けは成功した。ネットで調べて、ホームセンターで専用のツールを買い、その道具で壁の下地を調べて、下地の中にある固い柱を探して、ネジを打ち込んで、そうやって幾つかの部屋の窓について、難なくカーテンレールを取り付けていった。

「何だ、簡単じゃん。自分でやればできるじゃん」
そんな過信があったのかもしれない。

まあ多少は、角度的に並行じゃなかったりするところもあったが、「これも味だよね」なんて思いながら、元来の大雑把さを炸裂させていた。

最後は、寝室の部屋の窓。ここだけ、どうしても下地の柱が見つからなかった。

そもそも、ご存知の人は多いだろうが、釈迦に説法は承知で敢えて説明すると、カーテンレールというような重たいものを壁に取り付ける際には、何も考えず好きな場所にそのままネジを打ち込んではいけない。その理由は、全ての家がそうではないだろうが、壁の中に石膏ボードが埋めてある場合は、その強度があまり高くなく、重いものを固定して取り付けることができないためだ。取り付けることは可能だが、素材は柔らかく、ボロボロと簡単に崩れ、取り付けた物が重い場合には落下する危険性がある。そこで、石膏ボードの裏側に幾つかの柱(間柱)が入っているはずなので、その柱に対してネジを打ち込むなどすれば、重いものも固定して取り付けることができるというものだ。

で、他の部屋と同様に寝室も、専用のツールで下地の奥の柱を探してみたものの、どうにも見つからない。

「うーん、困った。でもまあこの辺りは固そうだし、ここでいいか」と、また大雑把な性格が顔を出して、とにかくどこでもいいからそれっぽい箇所に、カーテンレールを取り付けてしまった。というのも、日中帯にその作業をしていたのだが、そろそろ日も暮れてきたし、寝室にカーテンが無い状態で寝るのが嫌だったから、早く片付けたかったのだ。

しかし、それが良くなかった。

よかれと思って購入した遮光性のカーテン。それを寝室の窓につけて、そしてその日は眠ることにした。

で、翌る日、子供たちがその寝室で遊んでいると、「ガタン!」という音。見てみると、昨日取り付けたカーテンレールの一部が外れていた。

あっ、外れちゃったのか…。

遮光性のカーテンは重い。それに加えて、子供たちは無邪気にカーテンを引っ張って遊んでいた。さらに、元々の取付位置も適当だったことが決定打となって、カーテンレールごと外れてしまったのだ。

仕方ないので、もう一度取り付け直し。けれどやっぱり下地の柱を見つけることはできず、またとりあえずそれっぽい場所に取り付けることにした。

もう外れてほしくないので、子供にはキツく言ってカーテン付近で遊ばないように釘を刺す。そして、遮光性のカーテンはやめて、割と薄めのカーテンにする。

よしよし、これで大丈夫だろう(でも本当に大丈夫かな…)と思い、この問題はクローズということにした。


しかしやはり、問題は終わっていなかったのだ。

冒頭の話に戻るが、その日は娘は若干体調が悪かったので、保育園をお休みしていた。私は家で仕事をしていたので構ってあげることもできず、彼女は一人、寝室でゴロゴロしながら好きなテレビなどを観ていた。退屈だったのだろう。傍にあったカーテンを引っ張って遊んで、そうして、「ジャラジャジャラーン」という音を立てて、カーテンレールがゴソッと外れる事態になった。

これは本当に自分が嫌で嫌で仕方ないのだけれど、その状況を見て、娘の安否を確認した後すぐ、「なんでカーテンの近くなんかで遊んでいたんだ」と彼女を叱責してしまった。

悪いのは、適当に取り付けた自分(私)であることは明白なのに。娘はシュンとしていた。本当に申し訳ない。

本来なら「大丈夫?怪我は無い?」と優しく接するべきだった。ただでさえ、落ちてくるとは思わないカーテンレールが落ちて来て彼女は驚いているはずなのに。自分の幼稚さがつくづく嫌になるものだ。そもそも自分の取り付け方がマズかったくせに、あろうことか、それを責任転嫁して子供を責めている。ああ、嫌な人間だ。

しかしここで子供を怒っても自分のミスを悔やんでも、問題は解決しない。カーテンの無い状態で寝るのは避けたい。そのためには、まずは行動しなければならない。

二度あることは三度ある、と言う。
だからもう自分自身でカーテンレールを取り付けることはしないつもりだ。そもそも私では下地の柱は、いくら探しても見つけることはできなかったのだ。やるならプロにお願いするしかない。

しかし時間は、既に昼の12時過ぎ。
今からお願いして来てくれる業者の方は居るのだろうか。

一縷の望みをかけて、検索でヒットした業者さんに連絡をしてみる。こんな時、本当に妻は頼りになる。妻も家に居たのだが、すぐに状況を把握していた。

彼女は自分でカーテンレールの取り付けもしていないし、それが外れる原因とかそんなものも知らないはずなのに、率先して片っ端から色んな業者に連絡してくれた。本当に賢いというか、優秀なんだなと思った。理想の管理職、マネージャーだ。思えば、妻はそういった寛容さや包容力、大観する視点を持っているのだ。私なんかは全然その素質は無いが、きっとこういうタイプが出世していったら、部下は心強いのだろうなぁと思った。あっ、いや、そうだ、妻の話は一旦置いておいて、業者の話。

で、連絡はついても、やはり「今日はもう無理です」とか「カーテンレール一本だけでは取り扱ってないです」とか「見積もりしてそれで判断してからです」とかで、どこも断られてしまった。

「だめかなぁ。最悪、部屋を真っ暗にして寝れば、周りからは見られないかなぁ」と半ば私は諦めていたところ、妻が「えっ、大丈夫ですか、はい、えっと住所は〜」と電話で話している。これはもしや…。電話を終えた妻は「なんか今から来てくれるって。あと10分くらいで来られるみたい」とのこと。

というわけで、なんとか来ていただける業者の方が見つかった。おぉ!ありがたい…。

そして、本当にこの暑い中、すぐに駆けつけてくれた。しかも、お若く見えるのに、低姿勢でなんとも謙虚。早速状態を見ていただいた。「当初自分で取り付けたんですが、上手くいかなくて…」と恥を承知で説明。すると、その業者さんは私を責めたり馬鹿にすることもなく、「なるほど、これならすぐ直せます。料金はこのくらいですが…いかがでしょう」とのこと。もう文句も無い、というか逆にそんな安くていいんですかとこちらが心配になるほどリーズナブルな料金設定。「是非お願いします」と即答した。

で、30分もかからないうちに、綺麗な状態のカーテンレールに仕上げていただいた。

どうやら私が何度やっても上手く取り付けられなかった原因は、下地の柱が結構奥にあったため、単純にビスの長さが届いていなかったからだという。なるほど。

そして、その業者さんは「たまたま、近くの現場で別の仕事があったんで」と、偉ぶるでもなく最後まで腰が低く、サービスを受けたこちらが清々しくなるほどだった。「これでもう重いものとか、カーテン引っ張っても大丈夫だと思うんで」とまで言ってくださった。カッコいい。お願いして良かった。おかげで、我が家の睡眠環境が守られた。

ということで、今回のことで学んだことが二つあった。

1.カーテンレールの取り付けはプロに任せる。
2.自分の失敗を棚に上げて子供を叱るのをやめる。

いや実際、どうなることかと思ったが、久しぶりにプロの仕事を見た。「また是非何かあったら連絡ください」と言ってくれたが、何も無くても連絡したいような気持ちにさせてくれた。

それにしても、子供のいたずら遊びのおかげで、良い業者さんを知ることができた。両極端のイベントがあって、まるで塞翁が馬みたいな1日。あれ、意味合ってたっけ。まぁいいか。おわりです。